はじめに
介護ベッドは、起き上がりや立ち上がり、移乗などを支える大切な福祉用具です。
一方で、介護ベッドとサイドレール(ベッド用手すり)、介助バー、マットレスなどの間に身体の一部が挟まる事故が、これまで繰り返し発生しています。
消費者庁も、介護ベッドと柵・手すりの間に首などが挟まる事故について注意喚起を行っており、過去には死亡事故も発生しています。さらに、手すりとマットレスの間や、手すりとヘッドボードの間など、さまざまな場所で挟まり事故が報告されています。
では、なぜ安全性に配慮して設計された介護ベッドでも、こうした事故が起こるのでしょうか。
今回は、福祉用具専門相談員の方だけでなく、ご自宅で介護ベッドを利用されている方やご家族にも知っていただきたい、「隙間」の安全確認について解説します。
なぜ「安全なはずの介護ベッド」で挟まり事故が起こるのか?
介護ベッドやベッド用手すりについては、安全性を高めるための規格整備が進められてきました。
消費者庁によると、平成21年(2009年)にはJISが改正され、ベッド用手すりの隙間などについて見直しが行われています。古い製品を使用している場合には、特に注意が必要です。
しかし、規格に適合した製品であれば、どのような使用状況でも事故が起こらないという意味ではありません。
介護ベッドの安全性は、ベッド本体だけでなく、手すり、マットレス、利用者の身体状況、設置状態、使用方法などを含めて考える必要があります。
古い製品を長期間使用している
2009年のJIS改正以前に使用されていた製品については、現在の基準とは異なる場合があります。
消費者庁も、古いベッドを使用している場合は特に注意するよう呼びかけています。使用している製品が新JISに適合しているか、メーカーや福祉用具貸与事業者などに確認することが大切です。
ベッド・手すり・マットレスの組み合わせによって隙間が変わる
介護ベッドの挟まり事故は、手すりそのものだけが原因とは限りません。
消費者庁は、
- 手すり等の中
- 手すり等の隙間
- 手すり等とヘッドボードの隙間
- 手すり等とマットレス・ベッドフレームの隙間
などで事故が発生しているとしています。
つまり、「手すりは正しく取り付けられているから大丈夫」と考えるだけでは不十分です。
ベッド全体を一つのシステムとして確認する必要があります。
介護ベッドの挟まり事故を防ぐ3つの確認ポイント
① 使用している製品と製造時期を確認する
まず確認したいのが、現在使用している介護ベッドと手すりの情報です。
確認するポイントは、
- メーカー名
- 製品名
- 型式
- 製造時期
- 新JISへの適合状況
- リコール・注意喚起の対象になっていないか
です。
特に長年使用している製品や、中古品を使用している場合は、現在の安全基準との関係を確認しましょう。
リコール情報については、消費者庁のリコール情報サイトなどで確認できます。
② 「隙間」を目で見るだけでなく、使用状態を確認する
次に重要なのが、ベッド周囲の隙間です。
確認したいのは、
- 手すりとマットレスの間
- 手すりとベッド本体の間
- 手すりとヘッドボードの間
- 手すり内部の隙間
- ベッドを動かした際に生じる隙間
などです。
特に注意したいのは、ベッドを背上げ・高さ調整したときに、隙間の状態が変化しないかという点です。
NITEでも、介護ベッド用手すりとマットレスの間に腕が挟まって負傷した事例が公表されています。この事例では、手すりが正しく取り付けられ、変形や破損などの異常が認められなかったにもかかわらず、使用時の身体の位置によって挟まりが発生しました。
これは非常に重要なポイントです。
「壊れていない=安全」とは限らない。
実際の使用状態まで確認することが重要です。
③ 隙間が気になる場合は、自己流で塞がない
隙間があるからといって、バスタオル、毛布、段ボールなどを自己判断で詰め込むことは避けましょう。
介護ベッドや手すりには、それぞれ適合する部品や対応方法があります。
消費者庁も、隙間については対応品、カバー、クッションなどによって埋める方法を示していますが、実際に使用する際は、製品の取扱説明書やメーカーが指定する対応品・方法を確認することが重要です。
「とりあえず布を詰めておけば大丈夫」という考え方ではなく、専門相談員や貸与事業者に相談しましょう。
福祉用具専門相談員が現場で確認したいポイント
介護ベッドの安全確認では、製品だけを見るのではなく、利用者がどのようにベッドを使っているのかを見ることが重要です。
「気をつけてください」だけで終わらせない
例えば、
「手すりの隙間に注意してください」
という説明だけでは、利用者やご家族が具体的な危険をイメージできないことがあります。
そこで、
- 実際の寝姿勢を見る
- 寝返りの動きを確認する
- ベッドを背上げして確認する
- 手すりとの位置関係を見る
- マットレスの状態を確認する
など、実際の生活場面に近い状態で確認します。
「どこに」「何が」「どのように」挟まる可能性があるのかを、具体的に伝えることが重要です。
利用者の身体機能の変化を見逃さない
福祉用具を導入した時点では問題がなくても、その後に利用者の身体状況が変化することがあります。
例えば、
- 寝返りの方法が変わった
- 姿勢を自分で戻しにくくなった
- 筋力が低下した
- 認知機能の変化により操作が変わった
- ベッド上で身体がずれやすくなった
といった変化です。
こうした変化があった場合には、現在のベッド・手すりの組み合わせが引き続き適切なのかを再評価する必要があります。
福祉用具は「一度選んだら終わり」ではありません。
利用者の身体状況が変われば、福祉用具の安全性も改めて評価する。
この視点が重要です。
ご家族が今日確認したい「3分チェック」
ご自宅で介護ベッドを使用している場合は、次の項目を確認してみましょう。
チェック1
手すりとマットレスの間に、気になる隙間がありませんか?
チェック2
ベッドを背上げ・高さ調整したとき、隙間の状態が変わりませんか?
チェック3
以前と比べて、利用者の寝返りや姿勢が変わっていませんか?
一つでも気になる点があれば、自己判断で部品を追加したり、隙間を布などで塞いだりせず、福祉用具専門相談員や貸与事業者へ相談してください。
色のユニバーサルデザインから考える安全確認
安全確認では、「見えること」も重要です。
例えば、手すりやベッド周辺の部品について、
- どこが可動するのか
- どこに注意すべきなのか
- どこを確認すればよいのか
が分かりやすく表示されていると、利用者や介護者が危険箇所を認識しやすくなります。
ただし、色だけに情報を頼るのではなく、文字・形状・ピクトグラム・配置などを組み合わせることが大切です。
これは色覚の違いや加齢による視認性の変化などにも配慮した、ユニバーサルデザインの考え方につながります。
「赤だから危険」ではなく、誰が見ても「ここが注意点だ」と分かることが、安全な製品設計や情報提供では重要です。
まとめ
介護ベッドは、利用者の起き上がりや立ち上がりを支える重要な福祉用具です。
一方で、消費者庁やNITEが公表しているように、ベッドと手すり、マットレスなどの間に身体の一部が挟まる重大事故が発生しています。
安全確認で大切なのは、
「手すりが壊れていないか」だけを見ることではありません。
- ベッドと手すりの組み合わせ
- マットレスの状態
- 隙間の状態
- ベッドを動かしたときの変化
- 利用者の身体機能
- 実際の使用方法
まで含めて確認することが重要です。
そして、少しでも「以前と違う」「隙間が気になる」「身体が挟まりそう」と感じた場合は、自己判断で対処せず、福祉用具専門相談員や貸与事業者に相談しましょう。
介護ベッドの安全は、製品だけで決まるものではありません。
利用者の身体状況と、ベッド・手すり・マットレス、そして使用環境を一緒に確認することが、安全な在宅生活を守る第一歩です。
今日からできる安全チェック
- □ 手すりとマットレスの間を確認する
- □ 手すりとヘッドボードの間を確認する
- □ 手すり内部の隙間を確認する
- □ ベッドを動かしたときの隙間の変化を確認する
- □ マットレスがずれていないか確認する
- □ 利用者の寝返りや姿勢が以前と変わっていないか確認する
- □ 古い製品の場合は新JISへの適合状況を確認する
- □ リコール対象製品でないか確認する
- □ 隙間を自己判断で布や段ボールなどで塞がない
- □ 気になる点があれば福祉用具専門相談員・貸与事業者に相談する
「少し気になる」を見逃さない。
それが、介護ベッドの挟まり事故を防ぐための大切な第一歩です。
参考情報
- 消費者庁「介護ベッドと柵や手すりとの間に首などが挟まれる事故に注意―毎年死亡事故が発生しています―」
- 消費者庁「介護ベッド用手すりについての注意喚起」
- 消費者庁リコール情報サイト「介護ベッド用手すり」
- NITE「製品区分:家具・住宅用品 介護ベッド用手すり」

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