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バスボードの「横ズレ」に注意 固定確認と浴槽形状の見直しポイント

目次

はじめに

入浴は毎日の生活に欠かせない大切な時間です。しかし、高齢者や身体機能が低下した方にとって、浴槽をまたぐ動作は転倒や転落のリスクが高い場面の一つでもあります。

そこで活躍するのが「入浴補助用具(バスボード)」です。

バスボードは、浴槽の縁に設置して座ったまま安全に移乗できるよう支援する福祉用具ですが、実は見落とされやすい安全ポイントがあります。

それが「固定ストッパーの緩み」と「浴槽壁面の形状との相性」です。

本日は、厚生労働省やテクノエイド協会が示している安全な使用方法を踏まえながら、利用者の心身状態、住宅環境、介護保険制度の3つの視点から安全管理について考えてみます。


バスボードの役割とは

バスボードは、浴槽の縁に架け渡して設置し、利用者が座ったまま浴槽内へ移乗するための福祉用具です。

主に次のような方が利用します。

  • 下肢筋力が低下している方
  • 片麻痺がある方
  • 浴槽のまたぎ動作が困難な方
  • バランス能力が低下している方
  • 立位保持が不安定な方

座位で移乗できるため、転倒リスクを軽減しながら入浴を支援できる重要な福祉用具です。


固定ストッパーの緩みが招くリスク

バスボードは固定力が命

バスボードの裏面には固定ストッパーが設けられており、浴槽の内壁に密着させることで横ズレを防ぐ構造になっています。

しかし、日常的な使用の中で次のような負荷が繰り返されます。

  • 座面上で身体を横に移動する
  • 介助者が体位変換を支援する
  • 利用者が体を持ち上げながら移乗する

こうした動作により、固定ストッパーに継続的な力が加わり、少しずつ緩みが発生する場合があります。

固定力が低下すると、

  • バスボードの位置ズレ
  • 移乗時の不安定化
  • バランス喪失
  • 浴槽内への転落

などにつながるおそれがあります。

見た目に異常がなくても、保持力が低下しているケースがあるため注意が必要です。


利用者の心身状態から考える安全管理

体幹保持力の低下に注意

バスボード利用者の多くは、身体機能に何らかの制限があります。

特に注意したいのは、

  • 片麻痺
  • 体幹機能の低下
  • 筋力低下
  • 認知機能の変動

などです。

移乗時に身体を大きく動かす場合、片側へ強い荷重が集中することがあります。

固定状態が十分でない場合、その力を受け止められず、ボードが動く可能性があります。

また、認知機能に変動がある利用者の場合、不安定な状態に気付きにくいこともあります。

福祉用具の適合を考える際は、身体能力だけでなく、その日の体調や生活状況も含めて評価することが重要です。


見落とされやすい浴槽形状との相性

浴槽の内壁が傾斜しているケース

近年の住宅用浴槽には、デザイン性や保温性能を高めるために、内壁が下に向かって狭くなるテーパー形状が採用されているものがあります。

このような浴槽では、

  • 固定ストッパーが十分に接触しない
  • 接触面積が小さくなる
  • 使用中に保持力が低下しやすい

という問題が生じることがあります。

設置時には固定されているように見えても、実際の移乗動作によって徐々にズレが発生するケースも考えられます。

導入時には浴槽形状の確認を

福祉用具専門相談員や支援者は、

  • 浴槽の縁の幅
  • 浴槽壁面の傾斜
  • 固定ストッパーとの接触状況

を確認したうえで選定することが重要です。

「使えるか」ではなく、

「安全に使い続けられるか」

という視点が求められます。


介護保険制度から見た注意点

バスボードは、介護保険制度において特定福祉用具販売の対象となる場合があります。

レンタル福祉用具と異なり、購入後は定期的な点検機会が少なくなりやすい特徴があります。

そのため、

  • 家族
  • 訪問介護員
  • 福祉用具専門相談員

が連携しながら使用状況を確認することが大切です。

特に長期間使用している場合は、固定部の状態や劣化状況を定期的に確認しましょう。


学生・若手福祉用具専門相談員へのアドバイス

福祉用具の選定では、製品カタログの寸法確認だけで終わらせないことが重要です。

バスボードであれば、

  • 利用者の移乗方法
  • 荷重のかかり方
  • 浴槽の形状
  • 介助者の支援方法

まで含めて評価する必要があります。

現場では「設置できたから大丈夫」と判断されることがありますが、本当に確認すべきなのは「移乗中に安全性を維持できるか」です。

利用者・環境・用具の3要素を同時に観察する習慣を身につけることで、事故予防につながるアセスメント力が向上します。


色のユニバーサルデザインから考える安全性

バスボードの固定状態確認では、視認性も重要な安全要素です。

色のユニバーサルデザインの考え方では、

  • 色だけで情報を伝えない
  • 形や位置でも判断できる
  • 高齢者にも見やすい配色にする

ことが推奨されています。

例えば、

  • 固定位置を示すマーク
  • 締付位置の目印
  • ズレを確認する基準線

などがあると、色覚特性の違いに関係なく状態を確認しやすくなります。

介護現場では、誰が見ても分かる表示設計が安全管理の質を高めます。


まとめ

バスボードは安全な入浴を支える重要な福祉用具ですが、その安全性は固定状態によって大きく左右されます。

特に注意したいポイントは次の3つです。

  • 固定ストッパーの緩み
  • 浴槽壁面の傾斜や形状
  • 購入後の継続的な安全確認

福祉用具は設置した瞬間ではなく、使い続ける中で安全性を維持することが重要です。

「見た目は問題ない」ではなく、「本当に動かないか」を確認する習慣が、事故防止につながります。


今日から使える安全アドバイス

入浴前に次のポイントを確認しましょう。

  • バスボードの端を両手で軽く持つ
  • 左右方向に動かしてズレがないか確認する
  • 前後方向にも動きを確認する
  • 固定ストッパーの接触状態を確認する
  • 違和感があれば使用を中止する
  • 浴槽形状との適合を再確認する

毎日の「固定確認」が、安全な入浴への第一歩です。

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この記事を書いた人

著者プロフィール

福祉用具・介護用品・製品安全分野に長年携わり、製品の安全性や品質向上、事故予防に関する業務に従事してきました。

福祉用具は、利用者の生活や自立を支える大切な道具です。一方で、使用環境や身体状況によっては、思わぬ事故やヒヤリハットが発生することもあります。

これまでの経験を通じて、「事故はなぜ起こるのか」「どうすれば防げるのか」を常に考えながら、製品安全やリスクマネジメントに取り組んできました。

このブログでは、福祉用具や介護用品の安全な使い方、事故予防のポイント、製品安全に関するニュースや話題を、できるだけ分かりやすくお伝えしています。

また、YouTubeチャンネル「福祉用具安全ナビ」では、福祉用具に関するニュースや安全情報を音声コンテンツとして配信しています。

利用者、ご家族、福祉用具専門相談員、介護職の皆さまが、安全で安心な生活を送るための一助となれば幸いです。

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