「その歩行車、今の身体に合っていますか?」
街中でよく見かける「シルバーカー」や「歩行車」。高齢者の自立や外出を支える身近な福祉用具ですが、実は転倒事故が多く報告されている製品でもあります。本記事では、NITE(製品評価技術基盤機構)が公表している事故事例をもとに、事故が起きる背景と、今日から実践できる対策を、福祉用具専門相談員・ご家族の方向けに分かりやすく解説します。
シルバーカーと歩行車、その違いをご存知ですか
「シルバーカー」と「歩行車」、見た目が似ているため混同されがちですが、目的も構造も異なる福祉用具です。
- シルバーカー:自立して歩ける高齢者が、荷物の運搬や休憩のために使う補助具。バー型のハンドルが特徴。
- 歩行車:歩行に支えが必要な方が、体を預けながら安全に歩くための補助具。コの字型のハンドルが特徴。
目的が異なるため、使用者の身体状況に合わないものを選んでしまうと、かえって事故のリスクを高めてしまうことがあります。
実際に起きた事故事例(NITE公表情報)
NITE(製品評価技術基盤機構)が公表している「製品安全情報マガジン」では、シルバーカー・歩行車による転倒事故の事例が紹介されています。
事例1:傾斜路面でのバランス崩し(2020年11月・東京都・90歳代男性・重症)
歩行車を使用中に転倒し、足を負傷した事例です。使用者はケアマネジャーや訪問看護師から車いすの利用を勧められていましたが、歩行車を使用していたため、傾斜した路面でバランスを崩し、転倒したものと推定されています。
事例2:段差での前輪の引っかかり(2018年2月・静岡県・80歳代女性・重症)
歩行車を使用中に転倒し、左腕を負傷した事例です。後ろ向きに歩行車を引っ張っていた際、前輪が段差に引っかかり、バランスを崩して転倒したものと推定されています。
この2つの事例に共通するのは、「製品そのものの欠陥」ではなく、「身体状況に合った選び方」「路面環境への対応」といった、使い方・運用面に起因している点です。
なぜ事故が起きるのか ― 専門家の視点から
シルバーカー・歩行車は「安定して支える」という点で優れた設計がなされている製品です。ただし、その安定性は、あくまで「平坦な場所で、正しく使用した場合」に発揮されるものです。
以下の3点は、特に注意が必要なポイントです。
- 歩行能力が著しく低下している方、バランス感覚に不安がある方には、かえって危険な場合がある
- 段差・傾斜のある場所は、想像以上にリスクが高い(特に後ろ向きに引っ張って段差を越える動作は転倒しやすい)
- 「これまで大丈夫だったから」という安心感が、事故につながりやすい
今日からできる3つの対策
1. 使用前に専門家へ相談する
ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に、現在の身体状況にシルバーカー・歩行車が適しているかを定期的に確認してもらいましょう。歩行能力は時間とともに変化するものです。
2. 利用する道を家族・介助者と確認する
段差のある場所、踏切、舗装が不十分な道、急な坂道は、できるだけ避けるルートを選びましょう。やむを得ない場合は、段差の手前で一旦停止し、慎重に乗り越えることを心がけてください。
3. 正しい高さへの調整と、無理な使い方を避ける
重い荷物を載せすぎない、ペットをつながないなど、無理のない使い方を意識するだけで、バランスを崩すリスクは大きく下がります。
まとめ
- シルバーカーと歩行車は目的・構造が異なり、身体状況に合った選択が重要
- 事故の多くは製品の欠陥ではなく、「選び方」「路面環境への対応」に起因している
- 専門家への定期的な相談、道路環境の事前確認、無理のない使用が、事故防止の基本
福祉用具専門相談員の皆様におかれましては、利用者様・ご家族への説明の際に、こうしたポイントをお伝えいただくことで、事故のリスクを大きく下げることができます。
出典
NITE(製品評価技術基盤機構)「製品安全情報マガジン Vol.484 9月9日号『シルバーカー・歩行車、電動車いす、電動アシスト自転車の事故』」(2025年9月9日公表)
免責事項(記事末尾に掲載)
本記事は、公的機関が公表している情報をもとに、一般的な注意点を解説したものです。個別の身体状況・製品の適否については、担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員、医療・介護の専門家にご相談ください。

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